6.基本のしつけ

しつけの前に

  • 『しつけ』 というのは、犬と人間が一緒に快適に暮らすために、犬にある一定のルールを教えるものです。例えば 「人間を噛んではいけない」 とか 「うるさく吠えてはいけない(吠えても、飼い主の注意や合図で吠えるのをやめる)」などといったものです。
    つまり、飼い主の決めた生活パターンや生活のためのルールを守り、飼い主の指示に従うようにすることが『しつけ』 です。『芸を仕込む』こととは別です。

    さて、いざ 「しつけをする」 と言っても、そのやり方や注意点などは、個々の犬で異なります。犬種ごとに違いがあるのは当然として、同じ犬種であっても性格はそれぞれ異なります。従順で優しいと言われるゴールデンの中にも気の強いコはいますし、一般に気が強いと言われるテリアの中にも大人しい臆病なコはいます。

    しつけの基本は、良い事をした時の 『ごほうび』と、悪い事をした時の 『罰』 です。
    しかし、何を一番嬉しい 『ごほうび』 と感じ、何を一番つらい『罰』 と感じるかは、そのコによって異なります。本格的なしつけを始める前に、自分の飼っているコの性格をよく把握して、そのコにあった教え方やほめ方、叱り方をするように心がけましょう。

犬のしつけのメカニズム

  • 犬が物事を覚える基本となるのは、条件付けです。
    例:
    ・名前を呼ばれて、寄って行ったら嬉しいことがあった (ほめられた、オヤツをくれた、遊んでくれた、など)⇒ 次もやってみようかな?
    ・スリッパをかじっていたら、イヤなことがあった (叱られた、無視された、など)⇒ しちゃいけないのかな?

    仔犬のいろいろな行動の中から、ずっと続けて欲しいものに対しては常にほめ、仔犬を勇気づけましょう。逆に、やって欲しくないことは仔犬の時から叱るなどして、早めにやめさせるようにします。
    犬は、一度許された行為は 「やってもいいこと」だと判断します。成犬になってから、人間が 「もう大人なんだから…」というように考えても、犬には通用しませんので、注意が必要です。

    その他、毎日の暮らしの中で、同じ状況で同じ行動をしていれば、それが習慣となり、その行動を覚えていきます。
    例えば室内飼いの場合、散歩から帰ってきたら常に足を拭いてから家の中に入れるようにしていると、「散歩から帰ったら、足を拭かないと家に入れない」というように覚えて、大人しく足を拭かせるようになります。

    条件付けしたことを何度も繰り返すことで、完全に理解させていきます。
    名前を呼ばれる度に寄って行くと、いつも嬉しいことがある⇒ 名前を呼ばれたら、飼い主の所へ戻るということを覚えます。
    スリッパをかじっていると、いつもイヤなことがある⇒ スリッパをかじるイタズラをしないようになります。

    反復は、完全に理解するまで毎回続けることが大切です。
    犬種や性格によって、完全に理解するまでにかかる時間は違いますが、仔犬の時期は特に順応性に優れているので、人間があきらめなければ、必ず覚えてくれます。

しつけのポイント

  • 犬のしつけをするためには、人間 (飼い主)が犬にとっての良いリーダーにならなくてはいけません。リーダーだと感じているからこそ、犬は飼い主の言葉に耳を傾け、いいつけに従うのです。
    では、犬にとって 『良いリーダー』 とはどんな飼い主でしょう?

    ・生活のルールを作る

    食餌や散歩は、犬にとっては大きな楽しみであり喜びです。
    大切な食餌や散歩を与えてくれるのがリーダーというわけですが、食餌や散歩など、生活のリズムを作るのはリーダーである飼い主です。
    犬が吠えるなどして食餌や散歩を催促することがありますが、『催促されて、犬の望みをかなえる』というスタイルではいけません。
    犬は 『催促すれば、自分の望みがかなう』 と覚えてしまい、ひいては『自分の方がエライ』 と考えるようになってしまいます。犬の都合に振り回されないよう、注意してください。朝、起きる時間を決めるのも、食餌の時間も散歩の時間も、決めるのはリーダーであって、犬ではありません。

    ・一貫性を持つ

    その日の気分で、仔犬への接し方を変えてはいけません。
    機嫌がいい時には仔犬が何をしても叱らず、逆に機嫌が悪い時はちょっとしたことで仔犬を叱りつけるような接し方は、最悪です。自分の気分とは関係無く、いい事はいい、ダメな事はダメという善悪のけじめは、しっかりとつけましょう。

    ・犬の流儀を理解する

    犬のことを何も知らずに、「あれはダメ」 「これもダメ」と人間の都合ばかり押しつけてはいけません。犬についても、きちんと理解するようにしましょう。
    どうしても直らないイタズラや困った癖も、犬の習性が原因になっている場合があります。犬の生活習慣や習性をきちんと理解した上で、解決法を探しましょう。

    ・犬の愛情表現をイヤがらない

    犬は、特に仔犬は、相手の顔をなめようとします。
    これは仔犬が目上の相手に対して行うアイサツであり服従の表現ですので、振り払ったり叱ったりしてはいけません。顔をなめられるのがイヤでしたら、かわりに手をなめさせるなどして、きちんと仔犬の愛情表現を受け止めてあげてください。
    また、飛びつく仔犬に対しては、飛びつく前に「マテ」 をさせて、やめさせましょう。
    (仔犬が飛びつくのをやめたら、必ずほめてください)

    大型犬の仔犬の場合、体はどんどん大きくなっても、中身は仔犬のままですので、やはり飛びついたり顔をなめようとします。
    この時に、絶対に怖がったりしてはいけません。一瞬でも仔犬に対して 『怖い』 と感じてしまうと、仔犬は『自分の方が上』 だと感じて、飼い主を見下すようになってしまいます。

    飼い主が犬にとって、『頼りになる大好きなリーダー』であれば、しつけ上の問題はほとんど起こりません。そして、飼い主が犬にとっての 『良いリーダー』になるためには、日常生活でのちょっとした注意さえしていれば、特に難しいことではありません。
    言いかえれば、仔犬を飼い始めた当初からけじめのある生活をしていれば、それが自然と仔犬のしつけになっているハズです。

    「1回叱ったら、3回誉める」をモットーに、気長に付き合っていきましょう。

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